キャリブレーション
MeasureLab は、オーディオインターフェースの入力・出力電圧や、マイク・スピーカーの音圧レベル(SPL)を校正(キャリブレーション)する機能を持っています。 これにより、デジタル上の数値(dBFS)を、物理的な単位(V, dBu, dBV, dB SPL)と対応付けて扱うことができるようになります。
キャリブレーションとは
デジタルオーディオの世界では、信号の大きさは通常 dBFS (Decibels relative to Full Scale) で表されます。これはデジタルで表現できる最大値を 0 dBFS とした相対値です。 しかし、実際の物理的な電圧(ボルト)や音圧(パスカル/dB SPL)がどれくらいかは、使用するオーディオインターフェースの性能や、ゲインつまみの設定、接続されているマイクの感度によって変わります。
キャリブレーションとは、この「デジタル値(dBFS)」と「物理値(V, Pa)」の対応関係を測定し、ソフトに教える作業のことです。 これを行うことで、スペクトラムアナライザやオシロスコープの表示を、単なる dBFS ではなく、ボルト(V)や音圧(dB SPL)で直読できるようになります。
dBFS / dBV / dBu の関係について
MeasureLab では以下の単位をサポートしています。
- dBFS: デジタルフルスケールに対する相対レベル。校正なしで常に使用可能です。最大値が 0 dBFS です。
- dBV: 1 Vrms を 0 dBV とする電圧の単位です。 ()
- dBu: 0.775 Vrms を 0 dBu とする電圧の単位です。業務用音響機器でよく使われます。 ()
- dB SPL: 音圧レベル (Sound Pressure Level) です。 を 0 dB SPL とする音圧の単位で、マイク入力の校正 (SPL校正) を行うことで使用可能になります。
これらの単位で表示・測定を行うためには、入力感度 (Input Sensitivity) と 出力ゲイン (Output Gain) の校正が必要です。
キャリブレーションに必要なもの
校正を行う項目によって必要な機材が異なります。
- 入力・出力電圧校正:
- 電圧計 (テスター): TrueRMS (真の実効値) 対応のものが最適です。安価なテスターは正弦波以外で誤差が出たり、細かい電圧が読めない場合があります。
- オーディオケーブル: オーディオインターフェースの出力と入力を繋いだり、テスターを当てるために必要です。
- 音圧 (SPL) 校正:
- スピーカー: ピンクノイズを再生するために必要です。
- 騒音計 (Sound Level Meter): 基準となる音圧を測るために必要です。スマホアプリの騒音計でもある程度代用できますが、専用の測定器が望ましいです。
- 測定用マイク: 校正対象となるマイクです。
基本手順
すべての設定は、ウィジット画面にある Settings ウィジットの Calibration タブから行います。
入力感度 (Input Sensitivity) の校正
外部からの入力信号の電圧レベルを正しく測定できるようにします。
- Settings ウィジットを開き、Calibration タブを選択します。
- Input Sensitivity の横にある [Wizard] ボタンを押します。
- Step 1: 既知の電圧を持つ信号源(発振器など、あるいは既知の電圧を出力する別のプレイヤー)を入力端子に接続します。
- もしくは、MeasureLab の Signal Generator (出力校正済み) を使い、Loopback で入力する方法もありますが、最初は外部の基準電圧を使うのが確実です。
- Step 2: [Start Measurement] を押し、入力レベルを測定します。Input Level の表示が安定するのを待ちます。
- Step 3: 入力している信号の電圧値を入力します。単位は Vrms, mVrms, dBV, dBu から選べます。テスターでその時の電圧を測って入力するのをおすすめします。
- Step 4: [Calculate & Save] を押すと、1.0 FS (0 dBFS) が何ボルトに相当するかが計算され、保存されます。
出力ゲイン (Output Gain) の校正
MeasureLab から特定の電圧を出力できるようにします。
- Settings ウィジットの Calibration タブで、Output Gain の [Wizard] ボタンを押します。
- Step 1: オーディオインターフェースの出力端子に電圧計(テスター)を接続します。
- Step 2: テスト信号の周波数(通常 1000Hz)とレベル(例えば -12 dBFS)を設定します。クリップしない程度の大きめの音量が適しています。
- Step 3: [Start Tone] を押し、信号を出力します。
- Step 4: 電圧計で出力端子の電圧を測定し、その値を入力します。
- Step 5: [Calculate & Save] を押して保存します。
音圧 (SPL) の校正
マイク入力を音圧レベル (dB SPL) で表示できるようにします。
- 測定用マイクとスピーカーをセッティングします。
- Settings ウィジットの Calibration タブで、SPL Offset の [Wizard] ボタンを押します。
- 画面の指示に従い設定を行います:
- Test Signal Band: スピーカーの再生能力に合わせて選びます(通常は Speaker 500-2000Hz)。
- Output Level: テスト信号(バンド制限されたピンクノイズ)の音量を設定します。
- Averaging Time: 測定の平均化時間です。
- [Start] を押すとスピーカーからノイズが再生されます。
- 騒音計(Sound Level Meter)のマイクを、測定用マイクのすぐ近く(同じ位置)に設置し、騒音計が示す dB SPL 値を読み取ります。
- Measured SPL 欄に、騒音計の数値を入力します。
- [Calculate & Save] を押します。これで、入力された電圧レベルと実際の音圧の差分(オフセット)が記録されます。
キャリブレーションプロファイル
キャリブレーションの設定(入力感度、出力ゲイン、SPLオフセット)は、プロファイルとして名前を付けて保存することができます。 これにより、使用するマイクやオーディオインターフェースの組み合わせごとに設定を切り替えることが可能です。
- 保存される項目:
- デバイス名 (Device Name)
- ホストAPI (Host API: ASIO, WASAPI, etc.)
- 入力感度 (Input Sensitivity)
- 出力ゲイン (Output Gain)
- SPLオフセット (SPL Offset)
特に、同じオーディオインターフェースでも、ドライバの種類(Host API)が異なると(例: WASAPI と ASIO)、入出力の挙動やスケーリングが異なる場合があります。
MeasureLab はプロファイルに Host API の情報も記録しており、設定画面でプロファイルを選択した際に Device: [デバイス名] ([Host API]) のように表示されます。
これにより、どのドライバ設定で校正を行ったかを区別することができます。
再校正が必要なケース
一度校正しても、以下の場合は再校正が必要です。
- オーディオインターフェースを変更したとき: 入出力の規定レベルが異なるため。
- ハードウェアのゲインつまみを動かしたとき: インターフェース本体の Input Gain や Output Volume ノブを動かすと、電圧とデジタル値の関係が変わってしまいます。測定を行う際はノブの位置を固定し(テープで留めるなど)、その状態で校正することをおすすめします。
- マイクやスピーカーを変更したとき: マイクの感度やスピーカーの効率が変わるため、SPL校正をやり直す必要があります。