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Advanced Distortion Meter (高度歪み解析 / マルチトーン・IMD)

Advanced Distortion Meter

概要

通常の「THD(全高調波歪)」測定では分からない、より複雑で実践的な歪み(ひずみ)を分析するための高度なツールです。 単一の純音ではなく、複数の音を同時に鳴らしたり、特定の周波数の組み合わせを使ったりすることで、実際の音楽再生時に近い状態でのアンプやスピーカーの性能を評価できます。

「通常のTHD測定では良い数値が出るのに、実際に聴くと音が濁っている」といった現象の原因を探るのに適しています。

操作方法

測定の開始と停止

  1. Measurement Mode で測定したい項目(MIM, SPDR, PIM, Multi-Toneなど)を選びます。
  2. Start Measurement ボタンを押すと測定が始まり、信号が出力されます。
  3. 測定中はグラフが更新され続け、Results 欄に数値が表示されます。
  4. Stop Measurement で停止します。

グラフの見方

  • 横軸 (Frequency): 周波数です。
  • 縦軸 (Amplitude): 音の大きさ(dB)です。
  • 黄色の線が、入力された信号のスペクトル(周波数ごとの強さ)を表しています。

Results(結果表示)

測定モードに応じて、最も重要な指標がここに大きく表示されます。

  • TD+N / SPDR / PIM: メインの測定値です。数値が大きい(または小さい)ほうが性能が良いかはモードによります(後述)。

測定モードと設定

画面左側のパネルで設定を行います。

Measurement Mode (測定モード)

このツールの核となる機能です。主なモードは以下の通りです。

  • MIM (Multitone Intermodulation Distortion)

    • 概要: 31音など、多数の音を同時に鳴らす「マルチトーン」信号を使います。音楽信号に近い複雑な負荷をかけたときの「歪み+ノイズ (TD+N)」を測定します。
    • 見方: TD+N (dB) は、数値が「低い(マイナスの値が大きい)」ほど高性能です。
    • 設定:
      • Tone Count: 鳴らす音の数です。多いほど密度が高くなります。
      • Min / Max Freq: 測定する周波数帯域です。
  • SPDR (Spurious Free Dynamic Range)

    • 概要: 1kHzなどの信号を出した時に、「信号以外の余計な成分(スプリアス)」が信号よりどれくらい低い位置にあるかを測ります。
    • 見方: SPDR (dB) は、数値が「高い(プラスの値が大きい)」ほど、余計な成分が少なくてクリーンです。
    • 設定: 基本は1kHz固定です。
  • PIM (Passive Intermodulation / 2-Tone)

    • 概要: 2つの異なる高さの音(f1, f2)を鳴らし、その2音が混ざってできる「当初は存在しなかった音(混変調歪)」を測定します。
    • 見方: PIM (dBc) は、元の信号に対して歪み成分がどれくらい低いかを表します。数値が「低い(マイナスの値が大きい)」ほど高性能です。
    • 設定: Freq 1 / Freq 2 で2つの周波数を指定します(例: 18kHzと19kHz、または1.8kHzと2.1kHzなど)。

Generator (信号発生器)

測定に使用する信号の強さを設定します。

  • Amplitude: 信号の大きさです。
    • 測定対象(アンプなど)を壊さないよう、最初は低い値(-20dBFSなど)から始めてください。
  • 単位: dBFS (デジタルフルスケール), dBV (1V基準), dBu (業務用基準), Vrms (電圧) から選べます。

I/O (入出力)

  • Input Ch: 測定に使用する入力端子(マイクやライン入力)を選びます。
  • Output Ch: 信号を出力する端子(スピーカーやアンプへの出力)を選びます。

使用例

アンプの実力チェック (MIM測定)

「スペック表の歪み率は良いのに、激しい曲を聴くと音が濁る」ような場合、MIMモードが有効です。

  1. ModeMIM にします。
  2. アンプに接続し、Start を押します。
  3. TD+N の値を見ます。
    • 高級オーディオ機器では -80dB ~ -100dB 以下になることもあります。
    • -40dB 程度だと、複雑な曲で濁りを感じるかもしれません。
  4. グラフを見て、たくさんの柱(テスト信号)の間の「谷」が深く沈んでいるか確認します。谷が埋もれている場合、何らかの歪みやノイズが多いことを示します。

未知のノイズ(スプリアス)探し (SPDR測定)

電源ノイズやデジタル回路からの干渉など、予期せぬノイズが混入していないか見ます。

  1. ModeSPDR にします。
  2. Start を押します。
  3. グラフに、1kHzの大きな山以外に「ピョコっと飛び出ている小さな山」がないか探します。
  4. Max Spur に、一番大きなノイズの周波数が表示されます。「あ、電源周波数の50Hzが出ているな」などが分かります。

高域での混変調チェック (PIM測定)

ツイーターや広帯域アンプで、高い音が混ざった時に濁らないかをチェックします。

  1. ModePIM にします。
  2. Freq 1 / Freq 2 を設定します(例: 18000 (18kHz) と 19000 (19kHz) など)。
  3. Start を押し、グラフの低い周波数(1kHz付近など)に新しい山ができていないか見ます(差音歪など)。本来鳴らしていない低い音が聞こえる場合、混変調歪が発生しています。