BNIM Meter (音像定位可視化 / BNIM)

概要
人間の「聴覚(脳)」が、左右の耳に入ってくる音のズレをどう処理して「音の方向」を感じ取っているかをシミュレーションして可視化する、ユニークなメーターです。 通常の位相計(リサージュ波形)よりも直感的に、「どの周波数の音が、どの方向(左右)から聞こえているか」をサーモグラフィのようなヒートマップで表示します。 ステレオ音像の定位感や広がりを確認したり、バイノーラル録音のチェックに最適です。
画面の見方
メイングラフ
- 横軸 (ITD - Interaural Time Difference): 音の到来方向を表します。
- 中央 (0 ms): 正面(センター)に定位している成分です。
- 左側 (- ms): 左耳に先に音が届いている、つまり「左」から聞こえる成分です。
- 右側 (+ ms): 右耳に先に音が届いている、つまり「右」から聞こえる成分です。
- 縦軸 (Frequency): 周波数(音の高さ)を表します。上が高い音、下が低い音です。
- 色 (Color): その位置・高さでの「定位の強さ」を表します。明るい(黄色~白)ほど、その方向から強く音が聞こえています。
例えば、「ボーカルは真ん中(中央の縦線)」「ハイハットは少し右(右上の輝点)」のように音源の位置関係が見て取れます。
操作方法
基本操作
- Start ボタンを押すと測定(シミュレーション)を開始します。
- 音楽やマイク入力を流すと、画面上に緑や黄色の光(ニューロンの興奮パターン)が現れます。
- Stop で停止します。
BNIM Controls (設定)
表示の調整
- Persistence (残像): 画面の残像の長さを調整します。右にするほど長く残り、全体的な傾向を見るのに適しています。
- Gain (感度): 入力信号に対する反応の感度を調整します。色が暗すぎる場合は上げてください。
- Neural Glow (光の拡散): 光をぼやけさせます。数値を上げると、細かい点を繋げて「かたまり」として見やすくなります。
聴覚モデルの調整
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Enable ILD weighting (音量差の考慮)
- 通常、このメーターは「時間のズレ (ITD)」だけで方向を計算しますが、このチェックを入れると「音量のズレ (ILD)」も加味します。
- 高音域では人間は時間差よりも音量差で方向を感じ取るため、これをONにするとより実際の聴こえ方に近い表示になります。
- ILD Strength: 音量差の影響度を調整します。
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Max Freq: 分析する周波数の上限を設定します(1000Hz ~ 10000Hz)。定位感は中低域が特に重要なため、デフォルトの5000Hz程度が一般的です。
Click-to-play Test Signal (クリック試聴機能)
グラフ上をクリックすることで、その場所(周波数と方向)に対応するテスト音を実際に鳴らすことができます。「この位置に光があるけど、これはどんな音?」を確認したり、自分の耳の聴こえ方をテストするのに使えます。
- Enable click-to-play: この機能を有効にします。グラフ上をマウスでクリックまたはドラッグすると、その座標に応じた「プッ、プッ」というバースト信号(断続音)が再生されます。
- 横方向: 音の左右の遅延(ITD)が変化し、音が左右に動いて聞こえます。
- 縦方向: 音の高さが変化します。
- Loop last click: クリックを離した後も、最後に触った位置で音を鳴らし続けます。
- On/Off cycles: テスト音の鳴る長さと休む長さを調整します。
- Playback ILD: テスト音に人工的な音量差(ILD)を加えます。
使用例
ミックスの定位確認
楽曲のミックスダウン時に、各楽器が狙った位置に配置されているかを確認できます。
- ボーカルやベースがしっかりセンター(中央の線)に定まっているか?
- コーラスやリバーブ成分が左右にきれいに広がっているか?
- 意図せず左右にフラフラしている帯域がないか?
位相ズレの発見
- もし、「音は聞こえるのに、画面中央が暗く、左右の両端ばかりが光る」場合、逆相(Out of Phase) になっている可能性があります。左右のスピーカーケーブルの極性が合っているか確認してください。
バイノーラル効果の教育・学習
- Click-to-play 機能を使ってグラフをドラッグしてみてください。
- 「横に動かすと(時間差を変えると)、音が頭の中を左右に移動する」という体験ができます。
- 高周波(上の方)で操作した際、時間差だけでは方向感が分かりにくくなることや、ILD(音量差)を加えると急に方向感がつく現象など、人間の耳の不思議さを体験できます。