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Distortion Analyzer (歪み率・THD測定)

Distortion Analyzer

概要

オーディオ機器の「性能」を数値で測るための最も基本的なツールです。 アンプやDACなどが、元の信号をどれくらい正確に出力できているか(どれくらい歪んでしまっているか)を測定します。 健康診断でいう「血液検査」のようなもので、機器の基礎体力を知ることができます。

主な指標の意味

このツールでは以下の数値を測定します。

  • THD (全高調波歪率)
    • 純粋な信号に対して「どれくらい余分な倍音(高調波)が混ざったか」を表します。
    • 数値が小さいほど、原音に忠実できれいな音です。
  • THD+N (全高調波歪率 + ノイズ)
    • 歪みだけでなく「シャー」というノイズも含めた、トータルの汚れ具合です。
    • 現実的な性能指標として最もよく使われます。
  • SINAD (Signal-to-Noise and Distortion ratio)
    • THD+Nを「逆数にしてdB表示」したものです。
    • 数値が大きいほど高性能です。(例:SINAD 100dB は THD+N 0.001% に相当)
  • IMD (混変調歪率)
    • 2つの異なる音を混ぜた時に発生する濁りを測ります。複雑な音楽信号再生時の性能に近い指標です。

操作方法

測定の開始と停止

  1. Signal Generator で測定に使う信号(通常は Sine Wave)を選びます。
  2. Start Measurement ボタンを押すと信号が出力され、解析が始まります。
  3. リアルタイムで数値(THD+Nなど)が表示されます。
  4. Stop Measurement で停止します。

測定モード

Real-time (リアルタイム測定)

現在の瞬間の性能を測定し続けます。

  • 用途: 機器の調整をしたり、ボリューム位置による歪みの変化を見たりするのに適しています。
  • Meters: 左側に大きく数値が表示されます。
  • Spectrum: グラフタブで、歪み成分(基本波の2倍、3倍の周波数の山)を目視できます。
  • Harmonics: 歪み成分の内訳(2次歪みが多いのか、3次歪みが多いのか)を棒グラフで確認できます。

Frequency Sweep (周波数スイープ)

低い音から高い音まで、周波数を連続的に変化させて測定します。

  • 用途: 「低音は得意だが高音で歪む」といった、周波数ごとの特性変化を調べるのに使います。
  • 設定: Start(開始周波数)と End(終了周波数)、Steps(測定ポイント数)を設定します。
  • Sweep Results: 結果はグラフにプロットされます。

Amplitude Sweep (振幅スイープ)

音量を小~大へ変化させて測定します。

  • 用途: アンプの最大出力(どこまで上げると歪み始めるか=クリップポイント)を探るのに最適です。
  • 設定: Start(開始音量)と End(終了音量)を dBFS 単位で設定します。

設定項目

Generator (信号発生器)

測定に使うテスト信号の設定です。

  • Signal Generator:
    • Sine Wave: 基本的な正弦波です。THD測定に使います。
    • SMPTE / CCIF: IMD測定用の特殊なペア信号です。
  • Frequency: 正弦波の周波数です。標準は 1000 Hz です。
  • Amplitude: 信号の強さです。
    • アンプ測定時は、いきなり最大音量にせず、低い値から徐々に上げてください。
  • Signal Generator Mode: 外部のCDプレーヤーなどを音源にする場合は Off (External Source) を選びます。

Settings

  • Averaging (平均化)
    • 数値を安定させるために、何回分の測定を平均するかを設定します。
    • 数値を上げると表示が安定しますが、変化への反応は遅くなります。

使用例

アンプの最大パワーを調べる

手持ちのアンプが「何ワットまで綺麗に出せるか」を調べます。

  1. ModeReal-time にします。
  2. Amplitude を低めからスタートし、徐々に上げていきます。
  3. THD+N の値を見ます。通常は 0.01% ~ 0.1% 程度で推移します。
  4. ある音量を超えた瞬間、数値が 1.0%10% に急激に跳ね上がります。ここが「クリップ(限界)」です。
  5. その手前の電圧を読み取れば、実効出力(W)を計算できます。

真空管アンプの音色の秘密を見る

真空管アンプやエフェクターの歪みの質を調べます。

  1. 機器を接続し、音を出します。
  2. Harmonics タブを開きます。
  3. 棒グラフを見ます。
    • 2nd (2次) が高い: 温かみのある、心地よい歪みと言われます。
    • 3rd (3次) が高い: 硬く、エッジの効いた歪みです。