Goniometer (ゴニオメーター / 位相スコープ)

概要
ステレオ音声の「広がり」や「位相(フェーズ)」を視覚化するツールです。 左右のチャンネル(L/R)の関係性をリサージュ図形として描画し、音像の定位やステレオ幅、モノラル互換性を確認するために使用されます。 ミックスダウンやマスタリングの現場で、位相キャンセルの問題を発見するのに不可欠なツールです。
画面の見方
メインディスプレイ (リサージュ波形)
中心から広がる波形の形で、音のステレオイメージを表します。
- 縦に伸びる線: モノラル成分(LとRが同じ)を表します。完全に縦一直線の場合はモノラル音源です。
- 横に広がる線: 逆相成分(LとRが逆)を表します。これが強いと、モノラル再生時に音が消えてしまう(位相キャンセル)恐れがあります。
- 円形・ふんわりした広がり: 豊かなステレオ感を表します。
- 45度(右斜め上)の線: 右チャンネルのみ鳴っている状態です。
- 135度(左斜め上)の線: 左チャンネルのみ鳴っている状態です。
相関メーター
画面下部のバーは、左右チャンネルの相関係数(-1 ~ +1)を表します。
- +1 (右端緑色): 完全な相関(モノラル)。位相は合っています。
- 0 (中央): 無相関。左右が完全に独立しているか、90度の位相差がある状態。一般的なステレオ音楽は0〜+1の間を行き来します。
- -1 (左端赤色): 逆相関。左右の波形が反転しています。この状態が長く続く場合は、ケーブルの接続ミスや、エフェクトのかけ過ぎによる位相トラブルを疑ってください。
操作方法と設定
基本操作
- Start / Stop: 分析の開始と停止を切り替えます。
Display Controls (表示設定)
- Display Mode: 波形の描画方式を選べます。
- Line: シンプルな線で描画します。CPU負荷が低く、瞬時の動きを見るのに適しています。
- Phosphor: アナログオシロスコープの残像(蓄光)をシミュレートします。音の「密度」や「頻度」が色で表現されるため、全体的な傾向を掴みやすくなります。
- Color Palette: グラフの色(Green / Fire / Ice / Rainbow)を変更できます。
- Persistence: 残像の長さを調整します。長くすると、過去の音が画面に残り続け、音像の平均的な分布が見やすくなります。
- Glow: 線をぼかして発光させ、視認性を高めます。
- Smooth Lines: 線のカクつきを補間して滑らかにします。
Signal Controls (信号設定)
- Mapping: 軸の取り方を変更します。
- Mid/Side (M/S): 標準的なゴニオメーターの表示です。縦軸がMid(モノラル成分)、横軸がSide(ステレオ成分)に対応します。
- Left/Right (L/R): XYオシロスコープとしての表示です。X軸が左、Y軸が右(またはその逆)となります。
- Gain: 入力信号の表示サイズを調整します。
- Auto Gain: チェックを入れると、波形が画面に収まるように自動でサイズ調整されます。
- Invert X / Y: X軸またはY軸を反転させます。「L/R」モードでオシロスコープとして使う際、他の測定器と座標系を合わせるために使用します。
使用例
位相トラブルの発見
ミックスした音源が「スピーカーで聴くと広がりがあるのに、スマホやラジオ(モノラル)で聴くとボーカルが消える」といった現象が起きる場合、位相が反転している可能性があります。
- Correlation Meter を見ます。
- 針が常に -1 (赤色) 側に振れている場合、位相が反転しています。
- トラックのどれかで「Phase Invert(位相反転)」ボタンが押されていないか、またはステレオイメージャー等のエフェクトをかけすぎていないか確認してください。
ステレオ幅の確認
- Display Mode を Phosphor にし、Persistence を少し上げます。
- 波形の広がりを見ます。
- 細い縦線: ステレオ感が狭い(モノラルに近い)。
- 正円に近い: 理想的なステレオ感。
- 横にひしゃげた楕円: ステレオ感が強すぎます(中抜けする可能性があります)。
マイクのセッティング確認 (XY方式など)
ステレオマイクで録音する際、マイクの角度や距離が適切かを確認できます。
- Mapping を L/R にします。
- 音が右から聞こえた時にX軸(またはY軸)方向に伸び、左から聞こえた時にY軸(またはX軸)方向に伸びることを確認します。
- 位相が正しければ、中央の音は右斜め上(45度)の線になります。もし左斜め上(135度)になる場合は、片方のマイクケーブルが逆相になっている可能性があります。