Impedance Analyzer (インピーダンス測定 / LCR)

概要
Impedance Analyzer (インピーダンスアナライザ) は、スピーカーや電子部品などの「インピーダンス ()」を精密に測定するツールです。
一般的に「LCRメーター」と呼ばれる測定器と同じ機能を持ち、以下のパラメータを測定できます。
- 抵抗成分 (): Resistance (Ω)
- リアクタンス (): Reactance (Ω)
- インダクタンス (): Inductance (H) - コイルの成分
- キャパシタンス (): Capacitance (F) - コンデンサの成分
- 品質係数 (): Quality Factor
- 損失係数 (): Dissipation Factor
初心者のための基礎知識
インピーダンスとは?
直流回路では「抵抗 ()」が電流の流れにくさを表しますが、交流回路ではコンデンサやコイルも電気の流れを妨げたり進めたりします。これをまとめてインピーダンス ()と呼びます。
インピーダンスには「大きさ ()」だけでなく、電気の波を遅らせたり進めたりする「位相 ()」という情報が含まれています。
- 抵抗 (): 波を遅らせない()
- コイル (): 波を遅らせる(電圧に対して電流が遅れる、)
- コンデンサ (): 波を進める(電圧に対して電流が進む、)
このアナライザは、この「大きさ」と「ズレ(位相)」をロックイン検出技術で精密に分離して測定します。
接続方法
インピーダンス測定には、別途「シャント抵抗 (Ref Resistor)」を使った簡単な配線が必要です。 これを「I-V法(電流-電圧法)」と呼びます。
必要なもの
- オーディオインターフェース (2入力2出力推奨)
- 基準抵抗 (Reference Resistor): 程度の精密な抵抗器(例: )。
- 測りたい対象のインピーダンスに近い値を選ぶと精度が上がります。一般的には が万能です。
配線図

- Output L から測定対象 (DUT) に信号を送ります。
- 測定対象を通過した後、Ref Resistor を通ってグランド (GND) に落ちるように繋ぎます。
- Input L (Voltage Ch): 測定対象と抵抗の間(分圧点)に繋ぎます。これで「抵抗にかかる電圧」を測りますが、抵抗値が既知なので「電流」が計算できます。
- 注: デフォルト設定では、Input L を電圧、Input R を電流計測用としていますが、実際にはシャント抵抗の両端の電圧差から電流を算出するため、回路構成に合わせて設定を確認してください。
- 本アプリの標準設定:
- Voltage Ch (Input L): 測定対象にかかる電圧 を測る。
- Current Ch (Input R): シャント抵抗にかかる電圧 を測る。電流 となる。
画面左下の「Show Connection Diagram」ボタンをクリックすると、この配線図を別ウィンドウで確認できます。
操作手順
Initial Setup (初期設定)
- Audio Settings でオーディオデバイスが正しく選択されていることを確認します。
- Measurements > Impedance Analyzer を開きます。
- Settings パネルを設定します。
- Voltage Ch:
Left (Ch 1)(測定対象の上流側) - Current Ch:
Right (Ch 2)(シャント抵抗側) - Ref Resistor: 使用する抵抗の値(例:
100.0)を入力します。ここの数値が間違っていると全ての計算が狂います。
- Voltage Ch:
キャリブレーション
測定ケーブルやコネクタ自体の抵抗・容量をキャンセルして、精度を高める作業です。
- Open Cal: 測定端子を何も繋がない状態(開放)にして
Run Open Calを押します。 - Short Cal: 測定端子同士を直接繋いで(短絡)、
Run Short Calを押します。 - Load Cal (任意): 正確な基準抵抗をつないで
Run Load Calを行います(通常は省略可)。
マニュアル測定
特定の周波数での値を常時測定します。
- Manual Control タブを開きます。
- Frequency: 測りたい周波数(例: 1000 Hz)を設定します。
Start Measurementボタンを押します。- 右側の Result パネルに測定値が表示されます。
- |Z| (Magnitude): インピーダンスの絶対値。
- θ (Phase): 位相角。
- Ls / Cs: その周波数でのインダクタンスまたはキャパシタンス相当値。
※ プロット右下の「Time Series (Manual)」にチェックを入れると、周波数特性ではなく「時間経過に伴うインピーダンス変化」をグラフにプロットできます。
スイープ測定
周波数を変えながらインピーダンスの変化をグラフ化します。スピーカーの (共振周波数) の測定などに最適です。
- Frequency Response (FRA) タブを開きます。
- Start Freq / End Freq: 測定範囲を決めます(例: 20 Hz ~ 20000 Hz)。
- Sweep Mode:
Log(対数) が一般的です。 Start Sweepを押します。- Bode Plot にグラフが描画されます。
- スピーカーの共振点では山のようなピークが現れます。
結果の見方
Series vs Parallel (直列と並列)
LCRメーターには「直列等価回路 (Series)」と「並列等価回路 (Parallel)」の2つの表示モードがあります。 ボタンまたは設定で切り替えられます。
- Series (Ls, Cs, Rs):
- インピーダンスが低い部品(数Ω以下)を測るときに使います。
- 例: 低抵抗のコイル、大容量のコンデンサ。
- Parallel (Lp, Cp, Rp):
- インピーダンスが高い部品(数10kΩ以上)を測るときに使います。
- 例: 小容量のコンデンサ、高抵抗。
※ 迷ったときは、中間的な値(数100Ω~数kΩ)であればどちらでもほぼ同じ値になります。
パラメータ解説
- Rs (Equiv. Series Resistance): 等価直列抵抗。コンデンサやコイルの「純粋な抵抗成分(損失)」。これが小さいほど理想的な部品です。
- Q factor (Quality Factor): 共振の鋭さや部品の品質。
- コイルの場合: 値が高いほど損失が少なくて優秀。
- スピーカーの場合: 共振の制動力を示す指標。
- D factor (Dissipation Factor): 損失係数 ()。コンデンサの性能評価によく使われます。値が小さいほど優秀。
応用例
スピーカーユニットの測定 (TSパラメータ)
スピーカーユニット単体の端子に接続してスウィープ測定を行うと、 (最低共振周波数) でインピーダンスが急激に上昇する「山」が観測できます。 この山の高さ () や幅から、エンクロージャー設計に必要なパラメータを算出できます。
ケーブルの容量測定
RCAケーブルなどの芯線とシールド間に接続して測定します。
周波数 1kHz 程度で Cs (Capacitance) を見ると、120 pF のようにケーブル容量が測れます。これが低いほど高音域の減衰が少ないケーブルです。