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Linearity Analyzer (直線性・リニアリティ測定)

Linearity Analyzer

概要

信号レベルを変化させたときの、入出力の「比例関係(直線性)」を精密に測定するツールです。 「大きな音は正しく出るが、非常に小さな音になると誤差が出る(ビット落ちやノイズ埋もれ)」といった、デジタル機器(DAC/ADC)特有の問題や、アナログ回路のダイナミックレンジを検証するために使用します。

主な指標の意味

このツールでは以下の数値を測定します。

  • Linearity Error (直線性誤差)
    • 基準となるゲイン(通常は最大音量時)と比較して、どれくらい音量がズレているかを表します。
    • 理想的な機器では、入力が -100dB なら出力も正確に -100dB 分減衰し、誤差は 0dB になります。
  • Linear Range (線形動作範囲)
    • 誤差が一定以内(±0.5dBなど)かつ、ノイズフロアに埋もれていない最小の信号レベルです。
    • この値が -120dBFS など低いほど、微小な音まで正確に再現できる高性能な機器と言えます。
  • Slope (ゲインの傾き)
    • 理想的には 0(水平)ですが、コンプレッションなどがかかっていると変化します。
  • Hysteresis Width (ヒステリシス幅)
    • 往路(音を小さくしていく方向)と復路(大きくしていく方向)での測定値の差です。通常、電子機器では 0 に近いほど優秀です。もし大きな差がある場合、熱的な影響や、デバイスの内部状態による応答の遅れなどが考えられます。

操作方法

測定の実行

  1. Sweep Settings で測定条件を決めます。
  2. Start Sweep ボタンを押すと測定が始まります。
  3. 指定した範囲(例: -5dBFS ~ -120dBFS)を自動でスイープ測定し、結果をグラフにプロットします。
    • Hysteresis Sweep が有効な場合は、往復(大→小、小→大)の測定を連続で行います。

結果の見方

  • Linearity Error (Deviation) グラフ
    • 横軸が入力レベル、縦軸が誤差(dB)です。
    • 線が真ん中の「0dB」に張り付いているほど優秀です。
    • 左側(レベルが低い領域)に行くとグラフが暴れ始めますが、これはノイズの影響です。
  • Noise Floor Region (グレーの領域)
    • SNR(信号対雑音比)が悪く、測定値が信頼できない領域をグレーで示します。

設定項目

Sweep Settings

測定の範囲と細かさを設定します。

  • Frequency: 測定周波数です(通常 1kHz)。
  • Start Level: スイープの開始レベル(大きい音)。通常はクリップしない程度の -5 dBFS 等にします。
  • End Level: スイープの終了レベル(小さい音)。検証したい限界値(例: -120 dBFS)にします。
  • Steps: 測定ポイントの数です。多いほど詳細ですが時間がかかります。
  • SNR Limit: ノイズフロア判定の閾値です。信号がノイズよりこの値(例: 10dB)以上大きくない場合、そのデータは「信頼性なし」とみなされます。
  • Averaging: 1つのポイントあたりの測定回数です。回数を増やすとノイズの影響が減り、低レベルでの測定が安定しますが、時間が長くなります。

I/O Routing

  • Output: 測定信号を出すチャンネル。
  • Input: 測定信号を受けるチャンネル。
  • Enable Hysteresis Sweep: チェックを入れると、往路(大→小)のあとに復路(小→大)の測定を自動で行い、往復の差を検証します。

Display

  • Unit: グラフの横軸単位を切り替えます。
    • dBFS: デジタルフルスケール基準。
    • dBV: 電圧基準(キャリブレーション設定が有効な場合)。

Plot Controls

  • Y-Axis Zoom: グラフ(Linearity Error)の縦軸ズーム倍率を変更します。
    • Auto: データに合わせて自動調整します。
    • 0.1 dB ~ 20.0 dB: 指定した範囲(±)に固定します。
    • Tolerance Lines: グラフには ±1.0 dB の緑色の点線(許容範囲目安)が表示されます。

使用例

DACの微小信号再現能力をチェックする

手持ちのオーディオインターフェースやDACが、16bit精度(約-96dB)なのか、24bit精度(-144dB付近)の実力があるのかを調べます。

  1. ループバック接続(OutputとInputをケーブルで直結)します。
  2. End Level-140 dBFS に設定してスイープします。
  3. グラフを見て、どこまで誤差 0dB をキープできるか確認します。
    • -90dB あたりで暴れるなら 16bit クラスの性能です。
    • -110dB ~ -120dB まで粘るなら非常に高性能です。

デュアルADC(32bit float対応機など)のレンジ切り替えヒステリシスを観測する

最近の32bit float録音対応レコーダーやハイエンドI/Fでは、2つのADCを搭載し、入力レベルに応じて内部でゲインを切り替えることで広大なダイナミックレンジを実現しているものがあります。この切り替えポイントには、頻繁なパチパチ音を防ぐために「ヒステリシス(往路と復路で切り替わる閾値を変える処理)」が設けられていることがあります。

  1. Start Level: -3 dBFS (この例ではここから開始)
  2. End Level: -9 dBFS (ここまで下げる)
  3. Enable Hysteresis Sweep にチェックを入れます。
  4. 測定を実行すると、往路(-3 → -9)と復路(-9 → -3)でゲインやリニアリティ誤差のグラフに「ズレ」が生じることがあります。
    • これが観測される場合、そのデバイスはアナログまたはデジタル段でのゲイン切り替えを行っており、その挙動を可視化できたことになります。