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Lock-in Harmonic Analyzer

Lock-in Harmonic Analyzer

Lock-in Harmonic Analyzer (ロックイン高調波解析) は、ロックインアンプの原理を利用して極めて低ノイズかつ高精度に全高調波歪(THD)およびTHD+Nを測定するモジュールです。

従来のFFTベースの歪み測定では窓関数を使用するため、微小な成分がノイズに埋もれがちでした。このウィジットでは、基本波および最大200次までの高調波に対して多重並列のIQ検波(ロックイン測定)を同時に行うことで、目的の周波数成分のみをピンポイントで抽出します。これにより、FFTの限界を超える超低歪み領域(-160dBc以下など)の測定が可能になります。

測定原理の特徴

本ウィジットの最大の特長は、多重並列のロックイン検波(数学的には行列表射として実装)による解析アプローチです。

  1. 正確な周期の切り出し: 入力されたリファレンス信号(参照信号)のゼロクロス点(立ち上がり)を高精度に検出し、正確に整数サイクル分のデータを切り出します。
  2. 参照信号の生成: 検出された基本周波数 ω\omega に基づき、DC(直流)成分と、基本波および設定された任意の高調波成分(最大nωn\omega)に同期したサイン波(I)とコサイン波(Q)の参照信号を内部で生成します。
  3. 並列IQ検波(ロックイン): 測定対象の信号ベクトル YY に対して、生成したすべての参照信号を同時に掛け合わせて積分する(行列表射を用いた連立方程式を解く)ことで、各高調波の振幅と位相成分を一括して直読します。 $$ \text{Coefficients} = (B^T B)^{-1} B^T Y $$
  4. 高調波と残留ノイズの分離: 得られた各高調波の成分を元の信号から差し引くことで、純粋な残留ノイズ(Residual)成分をきれいに分離します。

この「見たい周波数にだけ極細のフィルターをかける」ロックインの特性により、FFT測定で必須となる窓関数による周波数の滲み(リーケージ)を根本的に回避し、強大なノイズの中から極小の歪み成分だけを正確に拾い上げることができます。

操作方法

1. Settings (設定)

  • Output Ch (出力チャンネル): テスト信号を出力するチャンネルを選択します(Left / Right / Stereo)。
  • Buffer (Integ. Time) (バッファサイズ / 積分時間): 解析に使用するデータの取り込み長を選択します。バッファサイズが大きいほど積分時間が長くなり、ランダムノイズが平均化され、測定のS/N比が向上します。超低歪み測定には大きなバッファ(例:262,144 や 524,288)を推奨します。
  • Frequency (周波数): 出力するテスト正弦波の基本周波数を指定します(Hz)。
  • Amplitude (振幅): 出力するテスト正弦波のレベルを指定します(dBFS)。クリップを避けるため、適切なレベル(例:-6.0 dBFS ~ -1.0 dBFS)を設定してください。
  • Harmonics (高調波次数): 解析対象とする最大高調波次数を指定します(最大200)。なお、サンプリングレートおよび基本周波数に応じて、ナイキスト周波数を超えない範囲で動的に制限されます。
  • Start Analysis / Stop Analysis: 測定の開始と停止を切り替えます。開始すると、バッファが満たされるまで「Buffering...」と表示され、その後解析結果が更新されます。

2. Input Routing (入力ルーティング)

  • Signal Input (測定信号入力): 高調波歪みを測定したい対象の信号が入力されているチャンネルを選択します。
  • Reference Input (参照信号入力): ロックイン解析の基準となる信号が入力されているチャンネルを選択します。これはテスト信号源そのものであり、測定対象系(DUT)を通る前の信号、あるいは波形歪みの少ない安定した信号である必要があります。信号の基本周波数と位相はこのリファレンスから高精度に抽出されます。

3. Overview (結果概要)

  • THD (全高調波歪): 測定された全高調波歪みの値を表示します(dB および %)。
  • THD+N (全高調波歪+ノイズ): 測定された全高調波歪みと残留ノイズの合計値を表示します(dB および %)。
  • Fundamental (基本波振幅): 測定された基本波(第1高調波)の振幅レベル(dBFS)を表示します。

4. 詳細解析タブ

  • Harmonics Table (高調波データ表): 各次数の高調波について、絶対振幅(Amp dBFS)、基本波に対する相対レベル(Level dBc)、および位相(Phase deg)を数値で一覧表示します。
  • Harmonics Plot (高調波スペクトル棒グラフ): 各高調波の成分レベル(dBFS)を視覚的に確認できるバーグラフです。
  • Residual (残留ノイズ波形): 入力信号から、計算された基本波とすべての高調波成分を差し引いた「残留成分(ノイズ+その他の非高調波成分)」の波形(間引き表示)です。