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Network Analyzer (周波数特性測定 / FRA)

Network Analyzer

概要

Network Analyzer(ネットワークアナライザ)は、機器やシステムの「周波数特性(振幅特性、位相特性)」を測定するためのツールです。 簡単に言うと、「低い音から高い音まで、どの高さの音をどれくらい正確に(大きく、または小さく)伝えられるか」をグラフにして見せてくれる機能です。

高速かつ高精度な「Fast Chirp」方式(対数チャープ信号)を使用して、短時間で全帯域の測定を行います。

主な用途:

  • アンプやフィルタの周波数特性(f特)測定。
  • スピーカーやヘッドホンの特性測定。
  • 2つの信号間の位相差や遅延の測定。

☕ コーヒーブレイク:コウモリの超音波と「チャープ」信号

本ウィジットの測定では、低い音から高い音へと短時間で変化する「Fast Chirp」信号を使用します。これはコウモリが障害物を見つけるための超音波(エコロケーション)と同じ仕組みです。短い時間内に全ての周波数成分が含まれているため、一度のスイープで全帯域の周波数特性を高速かつノイズに強い状態で測定することができます。

基本操作

測定の開始

  1. 「Settings」 タブで測定範囲(Start/End Freq)と振幅(Amplitude)を設定します。最大周波数は現在のサンプリングレートの半分(ナイキスト周波数)に自動的に制限されます。
  2. Duration (掃引時間) を調整します(デフォルト: 10.0秒)。時間を長くするほど、一般的にS/N比が向上します。
  3. Averages (平均回数) を設定します。複数回の掃引を行い平均化することで、ノイズを低減できます。
  4. 「Start Sweep」 ボタンをクリックすると測定が開始されます。測定中は進行状況がプログレスバーに表示されます。
  5. 測定を途中で停止するには、もう一度ボタンをクリックします。

ルーティングとXFERモード

入出力設定

  • Output Ch: 測定信号を出力するチャンネルを選択します(L, R, Stereo)。
  • Input Mode: 測定対象から戻ってくる信号をどこで受けるかを選択します。
    • Left (Ch1) / Right (Ch2): 選択したチャンネルの信号をそのまま測定します。「Single-Ch Mode」の設定により、絶対レベルまたは相対ゲインを表示できます。
    • XFER (Ref=L, Meas=R): Leftチャンネルを「参照信号(入力前の元の音)」、Rightチャンネルを「測定信号(機器を通った後の音)」として、その変化の比率(H = Meas / Ref)を計算します。オーディオインターフェース自体の癖をキャンセルし、純粋に「その機器が音にどんな変化を与えたか」だけを測定できる強力なモードです(相対測定)。
    • XFER (Ref=R, Meas=L): Rightチャンネルを参照信号、Leftチャンネルを測定信号として使用する逆方向のXFERモードです。
    • Crosstalk L -> R / R -> L: チャンネル間のクロストークを測定するためのプリセットマクロです。

表示と解析

「Display」 タブでグラフの表示方法をカスタマイズできます。

グラフの種類

  • Magnitude Response (振幅特性): 周波数ごとのゲイン(増幅率)または絶対レベルを表示します。単位はdBFS, dBV, dBu, Vrms, Vpeakから選択可能です。
  • Phase Response (位相特性): 周波数ごとの位相のずれを表示します。
  • Group Delay (群遅延): 位相の傾きから計算される、周波数ごとの遅延時間を表示します(「Show Group Delay」にチェック)。
    • 💡 Group Delayって何?:音の高さ(周波数)によって、機器を通り抜けるのにかかる時間が微妙に違うことがあります。例えば「低音だけ少し遅れて出てくる」といった現象です。この「音の高さごとの時間のズレ」を分かりやすく秒(ミリ秒)単位で表示するのが群遅延です。
  • Coherence (コヒーレンス): 入出力間の相関(信頼性)を表示します(XFERおよびCrosstalkの伝達特性モードでのみ有効)。1.0に近いほど信頼性が高いことを示します。コヒーレンスが低い場合は、ノイズや歪み、あるいはタイミングの不一致(レイテンシ未補正)などが疑われます(「Show Coherence」にチェック)。
    • 💡 コヒーレンスって何?:例えば、騒がしい部屋で友達が話しているとします。もし友達の声がはっきりと聞き取れれば「コヒーレンスが高い(信頼できる)」と言えます。しかし、周りの雑音(ノイズ)が大きすぎたり、友達の声が割れて(歪んで)いたりすると、何を言っているのかわかりません。コヒーレンスは「入力した音が、どれくらい綺麗なまま出力にたどり着いたか」を示す「通信簿」のようなものです!
  • ETC (Energy Time Curve): インパルス応答のエネルギーが時間とともにどう減衰していくかを表示します(「ETC」タブ)。
    • 💡 ETCって何?:例えば、硬いバネに重りをつけて弾くと、ビヨヨヨンと長く揺れ続けますよね。電気の世界のフィルター回路やアンプでも同じように、信号がパッと入った時にどれくらい「後を引くか(リンギング)」が音のキレの良さに影響します。ETC は、そのエネルギーが「どのくらい素早くスッと消えるか」を見るための特別な顕微鏡です!
  • Impulse Response (インパルス応答): 測定対象のインパルス応答を時間軸で表示します(「Impulse Response」タブ)。
    • 💡 インパルス応答って何?:スピーカーの前で「パン!」と手を叩いた時の響きを想像してみてください。その一瞬の音に対して、システムがどう反応して、どう響きが消えていくか。それを波形として捉えたものがインパルス応答です。これを見ることで、スピーカーのコーン紙の動きの収まり具合や、部屋の反射の様子などを時間軸で直感的に確認できます。
  • Harmonics (高調波歪み): 測定対象の高調波成分(2次〜5次、およびTHD)を周波数ごとに表示します(「Harmonics」タブ)。
    • 💡 ファリナの魔法(Farina method):通常、歪みを周波数ごとに測ろうとすると、一つずつ音の高さを変えながら何度も測る必要があります。しかし、このアナライザは「チャープ信号」と「インパルス応答」を使った数学の魔法(ファリナ法)により、たった1回の「ピュイーーン!」という測定で、すべての周波数の歪みを同時に分離して抽出できるのです!

表示オプション

  • Smoothing (スムージング): 周波数特性グラフの細かいギザギザ(ノイズ)をフラクショナルオクターブ(分数オクターブ)平滑化で滑らかにします。None, 1/1, 1/3, 1/6, 1/12, 1/24 Octave から選択可能です。
  • Display as % (Harmonicsタブ): 高調波プロットのY軸を切り替えて、歪みレベルを基本波に対するパーセンテージ(%)として対数スケールで表示します。
  • ETC Smoothing: ETCグラフのノイズを滑らかにします。Off/Light/Medium/Heavy から選択可能です。
  • Max/Min Freq: グラフに表示する周波数範囲を制限します。
  • Single-Ch Mode: 1チャンネルのみの入力を使用する場合の表示モードを選択します。Relative (Gain)(出力信号に対するゲイン)または Absolute (Level)(入力レベルをそのまま表示)が選択できます。

リファレンスカーブ (RIAA)

Network Analyzerには、フォノイコライザーの測定に欠かせないRIAAカーブ比較機能が搭載されています。

  • Show RIAA Curve: 標準的なRIAA再生カーブをグラフ上に重ね合わせて表示します。
  • Enable IEC Amendment: RIAAカーブにIEC改正(サブソニックフィルタ)を追加します。20.02 Hz(時定数 7950μs)のポールが追加されます。
  • Alignment Mode:
    • Auto (200Hz - 5kHz Fit): 200 Hzから5 kHzの範囲の平均レベルに合わせて、RIAAカーブの上下位置(オフセット)を自動的に調整します。素早い検証に最適です。
    • Manual: Gain Offset を手動で調整して、RIAAカーブと測定結果を微細に合わせることができます。

キャリブレーション

Latency (レイテンシ) と IR SNR

  • Calibrate Latency: システムの入出力の遅延時間を測定します。正確な位相測定を行うために、ループバック接続をした状態で事前に実行することを推奨します。
  • IR SNR: 最新の測定におけるインパルス応答(Impulse Response)のS/N比を表示します。値が高いほどノイズの少ないクリアな測定ができていることを示します。

Reference Trace (リファレンストレース)

現在の測定結果を「基準」として保存し、後の測定と比較したり、差し引いたりすることができます。

  • Store Reference: 現在のグラフをリファレンスとして保存します。
  • Apply Reference: 保存したリファレンスを現在の測定結果から減算して表示します(フラットな状態からの変化を確認する際に便利です)。

トラブルシューティング

  • Audio stream failed to start. Check ASIO settings: オーディオストリームの開始に失敗した際のエラーメッセージです。ASIO設定(サンプルレートやブロックサイズ)がオーディオインターフェースの設定と一致しているか確認してください。