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Transmission Analyzer (伝送路解析)

[!WARNING] 試験的機能 (Experimental Feature) 本ウィジットは現在、試験的に追加された機能です。開発段階にあるため、今後のアップデートでインターフェースや仕様が大幅に変更される可能性があります。


概要

Transmission Analyzer (伝送路解析) は、LFSR(線形帰還シフトレジスタ)に基づく擬似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)を使用して、オーディオ伝送路やオーディオインターフェース、DAC/ADCの動作整合性を精密に検証・診断するモジュールです。

USBケーブル、Bluetooth接続、あるいは物理的なアナログ回路など、あらゆる伝送経路(デジタル・アナログ双方)に対応し、サンプリング同期遅延や信号の完全性をリアルタイムで測定します。

☕ コーヒーブレイク:なぜ「PRBS」でオーディオ回路を測るのか?

オーディオの測定は通常「ピー」という正弦波で行いますが、「特定のビットだけが反転する」といった複雑なデジタル伝送の劣化は正弦波では発見できません。 PRBS(擬似ランダムバイナリシーケンス)は、一見ノイズのように聞こえますが、数学的に「次の値が完全に予測できる」特殊な信号です。 これを受信して予測値と突き合わせることで、デジタル伝送の完全性(ビットパーフェクトか)や、微細なアナログ歪みを瞬時に高精度で評価できます。

主な機能と測定モード

Transmission Analyzer には、測定対象に応じて切り替え可能な2つのメインモードがあります。

1. デジタル整合性モード (Digital Integrity)

主にデジタルオーディオ伝送路(USB、S/PDIF、ネットワーク、OSのオーディオミキサー、内部アプリルーティングなど)が ビットパーフェクト(無劣化伝送) であるかを診断します。

  • ビットパーフェクト検証: 送信値と受信値が完全一致するかリアルタイムにチェック。
  • ビットエラーレート (BER) の算出: 送信された全サンプルのうち、エラーとなったビットの割合をカウントします。
  • エラービットヒストグラム: 24ビットのどの階層(LSBからMSBまで)でエラーが起きているかを視覚化し、ハードウェアやドライバの挙動を追跡します。
  • DSP処理の自動検出・診断:
    • 送信信号に変化が加えられている場合、それが「単なるボリューム変更(ゲインスケール)」「16bitや8bitへのダウンサンプリング(ビット切り捨て)」「ディザリング/ノイズシェーピングの適用」「重いEQやコンプレッサーの介入」であるかを高度なアルゴリズムで推測して表示します。

2. アナログ伝送モード (Analog Transmission)

ケーブル、アンプ、DAC-ADCループバックといった、物理的なアナログ伝送路を流れる信号の品質を評価します。

  • EVM (Error Vector Magnitude: 誤りベクトル振幅) の測定:
    • デジタル変調などでよく使われる指標をオーディオ向けに応用し、波形のひずみや雑音によるズレをパーセンテージ (%) で表示します。
  • Equalized EVM (イコライズド EVM):
    • アナログ伝送路固有の周波数特性(F特のうねりや群遅延など)を自動で測定・逆補正(イコライズ)した上でEVMを算出します。これにより、ボリューム依存や純粋な線形歪みによる影響を取り除き、システムの非線形歪みやノイズのみの評価が可能になります。
  • インパルス応答 (Impulse Response):
    • 伝送経路のインパルス応答を逆畳み込み(デコンボリューション)によって瞬時に算出し、時間軸波形として表示します。
  • 周波数特性 (Frequency Response):
    • PRBSノイズの広い帯域幅を活かし、リアルタイムな周波数特性(振幅)を同時にプロットします。
  • ステップ応答と群遅延 (Step Response & Group Delay):
    • インパルス応答を積分してステップ応答を可視化し、オーバーシュート(%)、セトリングタイム(ms)、ドループ(%)などの過渡特性を自動計算します。
    • 群遅延を計算し、周波数帯域全体の位相の非線形性やタイムアライメントの問題を明らかにします。

共通機能(同期と遅延・ジッター測定)

本ウィジットは、サンプリングレベルで高精度な同期(ロック)を自動的に確立・追跡します。

  • 物理遅延の測定 (Delay): 伝送路全体の遅延時間(サンプル数、およびミリ秒単位)を自動計測します。
  • ジッターとドリフトの追跡 (Jitter/Drift): サブサンプル(1サンプル未満)スケールでのクロックの揺らぎや、再生/録音デバイス間のクロック偏差によるドリフトをリアルタイムで検出し、可視化します。
  • バッファスキップ自動復帰 (Warp Recovery): OSやドライバーの負荷によって突発的にサンプルがスキップ(プチノイズ等)した場合でも、自動的に遅延差分を吸収し、同期を維持します。

操作方法とパラメータ設定

画面左側のコントロールパネルから、測定の動作を調整します。

1. テスト制御 (Test Controls)

  • Start Diagnostics (診断開始) / Stop Diagnostics (診断停止): 測定の開始・終了を切り替えます。開始すると、指定された出力チャンネルからPRBS信号が再生されます。
  • Reset Statistics (統計リセット): 累積されたビットエラー数やエラーレート、ヒストグラムを初期化し、測定を再スタートします。

2. アナロジ設定 (Analyzer Settings)

  • Analysis Mode (測定モード):
    • Digital Integrity: ビット完全性の検証とDSP・エラー箇所の診断に特化します。
    • Analog Transmission: EVM、インパルス応答、周波数特性などのアナログ診断に特化します。
  • Input Channel (入力チャンネル): 測定を行う入力チャンネル(Left / Right)を選択します。
  • PRBS Pattern (PRBS パターン): LFSRの次数(周期)を選択します。
    • PRBS-7: 周期が127サンプルと非常に短く、高速同期に向いています。
    • PRBS-9: 低遅延環境向け。
    • PRBS-15: 業界標準。バランスが良く、大半の測定に最適。
    • PRBS-23: 長周期(8,388,607サンプル)。長時間のスイープや高負荷な診断に適します。
    • PRBS-31: 超長周期。最も過酷な負荷テストに使用します。
  • Bit Depth (ビット深度): PRBS信号の振幅分解能を選択します(16-bit または 24-bit)。
  • Response Smoothing (レスポンス平滑化): 周波数特性プロットの表示を滑らかにします。None (Raw) から 1/3 Octave まで選択可能です。
  • Averaging Mode (アベレージングモード): プロットの平均化処理を制御し、ノイズによる変動を抑えます。
    • None (Instant): 平均化を行わず、リアルタイムに表示します。
    • Fast (EMA) / Slow (EMA): 指数移動平均を適用します。
    • Infinite (Accumulate): すべてのデータを累積的に平均化します。

📈 グラフの読み方

  • Impulse Response / Freq Response タブ: アナログ伝送時の経路特性(時間軸・周波数軸)を可視化します。
  • Step Response / Group Delay タブ: 積分されたステップ過渡波形(リンギングや低域ロールオフの観察に有用)と、周波数ごとの群遅延(位相遅れ)を表示します。
  • Trend Charts タブ: 時間の経過に伴う「ゲインの変動 (dB)」「ビットエラー率 (BER %)」「クロックジッター・ドリフト (Samples)」の推移をスクロールグラフで表示し、システムの長期的な安定性を評価できます。
  • Bit Histogram タブ: デジタルモード時、エラーが発生しているビット位置を表示します。下位ビット(LSB側)だけでエラーがある場合はディザリングや量子化エラー、全ビットで均等にエラーがある場合はサンプルのドロップや激しいクリッピングなどが疑われます。